野球の肩・肘のコンディショニングは、「全身を温める→肩甲骨や背中を動かす→肩・肘周りを活性化する→投球動作へ進む」の順番が基本です。いきなり肩や肘を強く伸ばしたり、強いボールを投げたりするのは避けます。
ただし、試合前、練習前、筋力トレーニング後、痛みがある場合では適した内容が変わります。以下は、痛みやしびれがない選手が投球前に行う一般的な流れです。
野球の肩・肘のコンディショニングを行う順番
- 体調と肩・肘の状態を確認する
- 軽い有酸素運動で体温を上げる
- 背中・胸郭・股関節を動かす
- 肩甲骨と肩関節を動かす
- 肩周りの筋肉を軽く活性化する
- 肘・前腕・手首を動かす
- 短い距離から段階的にキャッチボールを行う
- 投球後に整理運動と状態確認を行う
肩や肘だけを先に動かすのではなく、投球に関わる下半身、体幹、背中を先に準備することがポイントです。
1. 最初に肩・肘の状態を確認する
コンディショニングの前に、前回の投球後から痛みや違和感が残っていないか確認します。肩の前側・後ろ側、肘の内側・外側、肘の曲げ伸ばし、腕を上げたときの痛みをチェックしてください。
- 普段より強い痛みがある
- 投球時だけでなく、日常動作でも痛む
- 肘の曲げ伸ばしがしにくい
- しびれや力の入りにくさがある
- 投球後から痛みが悪化している
このような場合は、痛みを我慢してコンディショニングや投球を続けないでください。痛みの原因は筋肉の張りだけとは限らないため、練習量を落とすか中止し、必要に応じて医療機関やスポーツ障害を扱う専門家に相談します。
2. 軽い運動で体温を上げる
最初は、ジョギング、軽いスキップ、サイドステップなどを数分行います。目的は、体を温めてこれから行う動作に備えることです。
この段階では、肩を大きく回し続けたり、腕だけで強く動かしたりする必要はありません。呼吸が乱れすぎない程度の軽さから始めます。
3. 背中・胸郭・股関節を動かす
投球では、肩や肘だけでなく、股関節、体幹、胸郭の動きも使います。そのため、肩周りを強く伸ばす前に、背中や胸郭、股関節を動かします。
たとえば、次のような動作を無理のない範囲で行います。
- 胸を開く動作
- 背中を丸める・反らす動作
- 体幹をゆっくりひねる動作
- 股関節を曲げ伸ばしする動作
- 片脚立ちや軽いランジ
反動をつけて無理に可動域を広げるのではなく、投球で使う範囲を意識して動かします。
4. 肩甲骨と肩関節を動かす
全身が温まったら、肩甲骨と肩関節を動かします。肩甲骨は、腕を上げる、引く、押すといった動きに関わるため、肩だけを回すよりも肩甲骨の動きも意識することが大切です。
肩をすくめる、肩甲骨を寄せる・開く、腕を前後に振る、腕を大きく回すといった動作を、痛みのない範囲で行います。
投球前は、強く押し込むストレッチよりも、動かしながら可動域を確認する動的な動きが中心です。肩を無理に引っ張る、痛い位置で長く止めるといった方法は避けます。
5. 肩周りの筋肉を軽く活性化する
肩関節を動かした後に、肩甲骨周りやローテーターカフを軽い負荷で活性化します。ローテーターカフとは、肩関節を安定させる複数の小さな筋肉群です。
チューブなどを使う場合は、次のような動作が一般的です。
- 肘を体側につけた外旋・内旋
- 肩甲骨を寄せるローイング動作
- 軽い負荷での腕の引き上げ
ここでの目的は筋肉を限界まで疲れさせることではありません。肩が重くなるほどの回数や強い抵抗は、投球前には適さない場合があります。フォームが崩れず、動きが滑らかに保てる負荷にします。
6. 肘・前腕・手首を動かす
肩周りの準備ができたら、肘、前腕、手首を動かします。肘だけを強く伸ばすのではなく、曲げ伸ばし、前腕の回旋、手首の曲げ伸ばしを軽く行います。
前腕の回旋とは、手のひらを上向き・下向きに返す動きです。投球では前腕や手首も使うため、痛みのない範囲で少しずつ動かします。
肘の内側や外側に痛みがある場合、肘を強くひねる、手首を強く反らす、チューブ運動を無理に続けるといったことは避けてください。
7. キャッチボールは短い距離から始める
肩・肘周りを動かした後、いきなり全力投球には移りません。短い距離で軽く投げ、肩・肘の反応を確認しながら、距離と強度を段階的に上げます。
- 近い距離で、軽い力で投げる
- フォームとボールの握りを確認する
- 痛みや引っかかりがなければ、少しずつ距離を広げる
- 投球の強度を徐々に上げる
- 全力投球や変化球は、肩・肘の状態を確認してから行う
距離を広げることと、投球の強さを上げることを同時に急に行わないのがポイントです。投げ始めてから痛み、抜ける感じ、引っかかり、普段と違うフォームが出た場合は、強度を下げるか投球を中止します。
投球後のコンディショニングは何をする?
投球後は、軽いジョギングや歩行で呼吸を整え、肩・肘・前腕の状態を確認します。必要に応じて、軽い動きや本人に合ったストレッチを行います。
投球直後に強いストレッチを行って痛みを消そうとするのではなく、まず痛みや腫れ、熱感、動かしにくさがないかを確認してください。翌日まで痛みが続く場合や、投球のたびに悪化する場合は、投球量や練習内容の見直しが必要です。
筋力トレーニングを行う場合の順番
筋力トレーニングでは、一般に全身の大きな動作から始め、肩や肘周りの細かい種目を後に回します。ただし、投球動作を最優先する日は、疲労を残さないように投球とトレーニングの順番を調整します。
| 場面 | 基本的な順番 |
|---|---|
| 投球前 | 全身を温める → 背中・股関節 → 肩甲骨・肩 → 肘・前腕 → キャッチボール |
| 筋力トレーニング | 全身の大きな動作 → 上半身の動作 → 肩・肘周りの軽い補助種目 |
| 投球後 | 整理運動 → 肩・肘の状態確認 → 必要なケア |
肩や肘の補助種目で疲れた状態のまま強く投げると、フォームや腕の振りに影響する可能性があります。そのため、投球を重視する日は、肩・肘を疲労させるトレーニングを投球直前に行わないようにします。
肩と肘のコンディショニングで避けたい順番
- 体が冷えた状態で、いきなり強く投げる
- 肩や肘を強く伸ばしてから、すぐに全力投球する
- チューブ運動で肩を疲れさせてから投球する
- 肩の痛みを隠すために、準備運動だけを長く続ける
- 投球後の痛みを、毎回ストレッチだけで済ませる
特に、準備運動をすると一時的に動きやすくなることがあります。しかし、痛みの原因が解決したとは限りません。動かしやすくなったかどうかだけで、投球を続けられると判断しないでください。
迷ったときの判断基準
痛みがなく、動きにも問題がない場合は、「全身を温める→体幹と肩甲骨を動かす→肩・肘を活性化する→段階的に投げる」という順番を基本にします。
一方、痛み、腫れ、しびれ、投球後の悪化、可動域の低下がある場合は、順番を工夫して投げ続けるのではなく、投球量を減らすか中止する判断が必要です。まずは痛みが出る動作と、いつからどの程度続いているかを記録し、指導者や医療機関に伝えられるようにしてください。







