野球で肘の痛みを予防するには、肘だけを鍛えるのではなく、肩・肩甲骨・前腕・体幹・股関節を動かしやすくし、投げすぎを避けることが大切です。トレーニングをしていても痛みを完全に防げるわけではないため、投球中や投球後に肘が痛む場合は、続けて投げずに原因を確認してください。
野球の肘の痛みを予防する基本
予防の中心は、筋力トレーニングだけでなく、投球量の管理、十分な休養、投球前の準備運動、無理のないフォームです。特に成長期は骨や関節が発達途中のため、「痛くても投げ続ける」ことは避けます。
- 投球前に体温を上げ、肩や股関節を動かす
- 肩甲骨、肩、前腕、体幹、下半身をバランスよく鍛える
- 投球日と休養日を組み合わせ、連日の投げ込みを避ける
- 痛み、腫れ、肘の曲げ伸ばしの制限があるときは投球を中止する
- 急に投球数や強度を増やさない
肘の痛み予防に役立つトレーニング方法
以下は、痛みがないときに行う基本的なトレーニング例です。回数は目安なので、フォームが崩れない範囲で行い、違和感や痛みが出たら中止してください。
1.肩甲骨を動かす運動
肩甲骨が動きにくいと、投球時に肩や肘へ負担が集中することがあります。肩をすくめず、肩甲骨を背中の上で動かす意識で行います。
- 両腕を前に伸ばして立つ。
- 背中を丸めすぎないように、肩甲骨を外側へ広げる。
- 次に、胸を軽く開きながら肩甲骨を内側へ寄せる。
- ゆっくり10回程度繰り返す。
腕を大きく回す運動も、痛みがなければ準備運動として行えます。ただし、勢いをつけて無理に回したり、肩を痛い位置まで動かしたりしないでください。
2.チューブを使った肩の外旋・内旋
肩の回旋運動は、投球で使う肩周辺の筋肉を整える方法の一つです。ゴムチューブを固定して、軽い負荷から始めます。
- 肘を体の横につけ、肘を約90度に曲げる。
- 脇にタオルを挟み、肘が体から離れないようにする。
- 前腕をゆっくり外側へ動かし、元の位置へ戻す。
- 同じ姿勢で、今度は前腕を内側へ動かす。
- 左右それぞれ10〜15回を目安に行う。
肩をすくめる、体をひねって反動を使う、チューブを強く引きすぎると、狙った筋肉に負荷がかかりにくくなります。肘や肩に痛みが出る場合は中止します。
3.前腕の曲げ伸ばしと手首の運動
前腕や手首は、ボールを握る、腕を振る、リリースする動作に関わります。軽いダンベルや水の入った小さなペットボトルを使い、ゆっくり動かします。
- 前腕を机や太ももに置き、手首だけを動かせる姿勢を取る。
- 手のひらを上に向け、手首をゆっくり反らしたり戻したりする。
- 手のひらを下に向け、同じように手首を動かす。
- 前腕を固定したまま、手のひらを上向き・下向きにゆっくり返す。
- 各動作を10回程度行う。
重い負荷で回数を増やすより、手首や前腕をまっすぐ保ちながら、ゆっくり動かすことを優先してください。肘の内側や外側に痛みが出る場合は、負荷をかけずに休みます。
4.体幹を安定させるトレーニング
体幹が安定すると、投球時に上半身だけで腕を振る動作を減らしやすくなります。代表的なのは、うつ伏せで体を支えるプランクです。
- うつ伏せになり、肘と前腕、つま先で体を支える。
- 頭からかかとまでを無理のない範囲で一直線にする。
- 腰を反らしたり、お尻を高く上げたりせず、呼吸を続ける。
- 20〜30秒を1〜3回行う。
難しい場合は、膝を床につけて行います。腰や肩に痛みがある場合は、無理に続けず、姿勢を変えるか専門家に相談してください。
5.股関節と下半身を使う運動
投球では、下半身から体幹を通して腕へ力を伝えます。股関節や脚が使いにくいと、上半身や肘に負担が偏る可能性があります。
痛みがなければ、次のような運動を取り入れます。
- 自重スクワット
- ヒップリフト
- 片脚立ち
- 股関節の前後・左右への動的な動き
スクワットでは、膝が内側へ入りすぎないようにし、股関節を後ろへ引く意識で行います。腰、股関節、膝に痛みがある場合は、回数を減らすか中止してください。
投球前に行う準備運動
投球前は、いきなり全力投球をせず、全身を温めてから段階的に強度を上げます。静止したまま筋肉を強く伸ばすストレッチだけで終わらせず、体を動かしながら準備します。
- 軽いジョギングやスキップで体温を上げる。
- 肩回し、腕振り、体幹ひねりを小さな動きから行う。
- 股関節、膝、足首を動かす。
- チューブ運動などを軽い負荷で行う。
- 近い距離のキャッチボールから始め、距離と強度を段階的に上げる。
- 肩や肘に痛みや違和感がないことを確認してから投球練習へ移る。
準備運動をしても痛みが出る場合は、準備不足だけが原因とは限りません。投球を続けず、フォーム、投球量、筋肉や関節の状態を見直します。
トレーニングと一緒に投球量も管理する
肘の痛みを防ぐには、トレーニングだけでなく、投球の量と休養の管理が必要です。投球数、登板日、強い投球をした日、痛みの有無を記録すると、負担が増えたタイミングを確認しやすくなります。
- 短期間に投球数や全力投球を急に増やさない
- 連日の投球や、投手と捕手を同じ日に行う場合は負担を考える
- 試合だけでなく、練習や自主練習の投球も合計して考える
- 十分な睡眠と食事を確保する
- チームや年代の投球制限がある場合は、そのルールに従う
投球制限の具体的な数字は、年齢、競技団体、登板内容などで異なります。そのため、所属チームや競技団体のルールを確認し、数字だけでなく痛みや疲労の状態も合わせて判断してください。
肘が痛いときはトレーニングを続けてよい?
投球中や投球後に肘が痛む場合は、痛みを我慢して投げたり、痛い部位を鍛えたりしないでください。軽い違和感でも、投球を止めると改善するのか、日常生活でも痛むのか、腫れや熱感があるのかを確認します。
次のような場合は、早めに整形外科などの医療機関で相談してください。
- 休んでも痛みが続く
- 肘を完全に曲げ伸ばしできない
- 腫れ、熱感、強い押した痛みがある
- 投球のたびに同じ場所が痛む
- しびれや握力の低下がある
- 成長期の選手で、肘の痛みを繰り返している
痛みの原因は、筋肉の疲労だけでなく、投球フォーム、関節の動き、靱帯や骨の問題など複数考えられます。症状だけで原因を決めつけず、必要に応じて医師や理学療法士、指導者に相談してください。
野球の肘の痛みを予防するための実践例
痛みがない選手が行う場合の一例です。実際の回数や負荷は、年齢、体力、練習量に合わせて調整してください。
- 投球前:軽いジョギング、動的なストレッチ、肩甲骨運動、軽いチューブ運動
- 練習後:軽い整理運動と、肩・前腕・股関節の状態確認
- 週のトレーニング:肩の外旋・内旋、体幹、下半身を無理のない負荷で実施
- 毎回の確認:肘の痛み、腫れ、曲げ伸ばし、投球後の疲労を記録
最初に行うなら、投球量を記録し、痛みのない範囲で肩甲骨・肩・体幹・下半身を整えることから始めます。痛みがある場合はトレーニングで解決しようとせず、投球を中止して状態を確認してください。







